(Un)awareness



、ジュンス大丈夫だった?」
「あ…うん、なんか寝不足だったみたい」
「泣いてたように見えたけど」
「ほんと?分かんなかった」
「…ふーん」


この数日間、ジュンスの様子がおかしかった。収録の合間にひどくぼんやりしていたり、メンバーでご飯に行こうと言っても頑なに断ったり、今朝なんて急に具合が悪いと言い出して部屋に閉じこもったまま出て来ない。「機嫌が悪いんだよ」とみんなは言うけど、俺は気付いていた。ジュンスが泣いていたことに。そしてジュンスを優しく慰めていたのは、他の誰でもなくだったことに。弟に対する愛情と一緒、っては言うだろう。でも俺にとってジュンスは弟的存在であり、1人の男でもある。時には笑って見過ごせないことだってあるんだ。


、俺も具合悪くなってきた」
「いや、元気そうですけど」
「涙が出そうなくらい辛い」
「眠いだけでしょ?」
「違う」
「ユチョンが暇そうだから慰めて貰えば?」
「何で俺は駄目なの?」
「はぁ?」
「…ジュンスにはあんなに優しくしてたのに」


は皿洗いの手を止めて、意外そうな顔で俺を見た。何も口にしなかったけど、言いたいことは分かる。俺が焼きもちを妬くなんて思わなかった。明らかにそういう視線。でも俺だって普通の人間なんだ。を一人占めしたいのは同じなんだよ。気付いたらの腕を取って、自分の部屋に向かっていた。途中で擦れ違ったジュンスは、険悪な雰囲気に心配そうな顔をする。それも気に食わない。


「ちょっとユノ、正気?」
「なにが」
「顔、めちゃくちゃ怖いんですけど」


正気なわけない。自分の彼女が余所見をしていて、冷静でいられる方がおかしいと思う。部屋のドアを開けると、チャンミンが呆れたように言った。


「朝から喧嘩?」
「チャンミン、邪魔すんなよ」
「はいはい」


ため息をついて部屋を出て行くチャンミン。扉が閉まった瞬間、が反抗するように口を開いた。でも聞く気にならない。首筋や頬、至る所にキスをして自分をと重ね合わせる。このままどこにも行かないで欲しい。俺だけを見ていて欲しい。


「ユノ」
「なに」
「止めて」
「やだ」
「私も嫌だよ、こんなの」
「俺が悪いの?」


嫉妬する俺が悪い?ジュンスの気持ちに気付かない振りをしている俺が?どんどん浮かんでくる思考のせいで、溜め込んでいた気持ちが爆発しそうになる。でもの顔を見た瞬間、急にそれ以上何も出来なくなった。「ごめん」と短く言って、掴んでいた腕を離す。の眼には涙が浮かんでいたから。


「…誰も悪くないよ」


は悔しそうに呟いて、逃げるように部屋から出て行った。後に残された俺は、ベッドに座ってぼんやり窓の外を見つめることしか出来なかった。


2010.10.05