time flies...



明け方に目が覚めた時、それも休みの前日ならまだしも平日に目が覚めた時、今までの睡眠が全て無意味なものに感じる。決して大袈裟に言っているわけではなくて、日々睡眠を削って働いている人にとっては溜まったもんじゃない。私が睡眠を削っているのは海外ドラマを見るためだけど、それだって立派な理由だ。ベッドに入って数時間、私を起こしたのは騒音でも彼氏の寝言でもない。蚊だ。真夜中と朝の境目に、耳元で世界一嫌いな音が聞こえる。1人で寝ていたら勢いよく起き上がって部屋の電気まで付けるところだけど、腰に回された腕の先にキュヒョンが眠っている。急に灯りを付けて起こすわけにもいかないし、だからと言ってこのままだと私は朝まで眠れない。私はそっとキュヒョンの腕を解いて、今年最初の蚊取り線香を設置するために立ち上がった。


「…?なにしてんの」
「蚊取り線香探してる。キュヒョンは寝てて」
「電気付けていいよ」
「ありがと、あった」


キュヒョンは枕元のライトを付けると、眠そうに瞼をこする。蚊のせいで、起こさなくても良い人まで起こしてしまった。私はベッドの後ろから手探りで延長コードを見つけると、蚊取り線香の電源を入れる。床にしゃがみ込んでしばらく稼働状況を見ていたら、ベッドの上からキュヒョンに腕を引っ張られた。


「なに?」
「どっか噛まれた…?」
「大丈夫だけど、キュヒョンもしかしてやられた?」
「ううん、の血吸うなんて許せないと思って」
「寝惚けてる?良く分かんないけど起こしてごめん」


蚊取り線香独特の香りが部屋に漂い始めると、私は安心してベッドに戻った。キュヒョンがまだぶつぶつ言っていたけど、貴重な睡眠時間を潰したくなくて聞こえない振りをする。蚊のせいで少し不機嫌になっていたし、さっきまで見ていた夢が楽しかったから続きが見たい。呑気に目を閉じた数秒後、いきなり首筋にチクッとした痛みを感じる。


「…何?」
を襲いたくなる気持ちも分かる」
「はぁ?」
「僕以外に噛ませないって約束して」
「不可抗力だよ」
「そうかな」


言っていることは支離滅裂なのに、肩に落ちた唇はそのまま背中を滑って、私の体をどこまでも侵食していく。夜がゆっくりと明ける中、2人の間だけ急激な早さで時が流れていた。何かを求めているとき、時計の針は目で追いきれないスピードで進む。光が宇宙を突き抜けるように、時間も意識も感覚も、一気に押し寄せて消えていった。


2012.05.27