夏が来た



「君と出会う度に、夏は新しくなる」
「は?」
「いい言葉だなと思って。と出会う度に、夏は新しくなる」
「チャンミン大丈夫?暑さでやられた?」
「僕はまともだよ。素直に感動したから言っただけ」
「ふーん。じゃあ今年はどんな夏なの?」
「あつい夏」
「それは毎年じゃん。夏は暑いものだよ」
「そっちの暑いじゃなくて」


熱い夏、と砂に書いて、チャンミンは笑った。眩しい太陽に、眩しい笑顔。私の方が新しい夏を感じている気がする。チャンミンと初めて一緒に過ごした夏の日、まだお互いにぎこちなくて、手を繋ぐことさえ躊躇われた。2回目の夏は、少し開放的になって、喧嘩ばかりしていた。そして3回目の夏、相手の気持ちを考えるということを学んだ私たちは、愛に溢れた毎日をおくった。今年はどうなるんだろう。波の音を聞きながら、私は想像する。チャンミンと2人きりではないけれど、世間から遠く離れた場所で大好きな人たちと過ごす夏休み。いいことしか思い浮かばない。


「じゃあ、もっと熱いことしなきゃね」
「例えば?」
「崖の上から飛び込むとか」
が1人でするならいいよ。僕は下で待ってる」
「ダメだよ、一緒に行こう」
はあの崖行ったことないから分かんないんだよ。どれだけ怖いか」
「さっきユノが飛び込んでたよ」
「ユノと同じ感覚で生きてたら、体もたないから」
「ごちゃごちゃ言わずに行くの。熱い夏にするんでしょ?」


結局、先に飛び込んだのはチャンミンで、私は実際その場に立ってみたら怖くて動けなくなった。最初は辛抱強く下で待っていたチャンミンも、気づけば優雅に泳ぎ回っている。後からきたユチョンに背中を押されて飛び込んだときには、もう太陽が沈む準備をしていた。


「だから言ったでしょ、怖いって」
「いいじゃん、最終的には上手くいったんだから」
「僕がいなかったら完全に溺れてたよ。なんで泳げないって言わないかなぁ」
「昔は泳げてたの」
のために浮き輪買わなきゃね」


夜、日が暮れた砂浜を2人で歩く。昼とは違って星が煌めいていた。都会では見れない光景だ。


「来年の夏も一緒にいたいね」


チャンミンが何気なく呟いた言葉に、私が命を吹き込む。


「来年の夏も一緒にいるんだよ。希望じゃなくて事実」
「…そうだね」


珍しく何も言わないチャンミンの、瞳の先は私と同じ。そっとキスをして、繋いだ手の力を強める。熱い夏はまだまだ始まったばかり。


2015.8.10