My Boyfriend
部屋のドアを開けた瞬間、ぐっすり眠り込んでいるドンへを見つけて、私は小さく微笑んだ。ゆっくり眠る暇もないくせに、時間があれば会いに来てくれる。デートなんて出来なくても構わない。私の視界に本物のドンへがいる。ただそれだけで充分だった。私はそっと中に入って、音を立てないようにクローゼットを開けた。同時に棚の上から本が落ちてくる。掃除の途中だったことを忘れていた。恐る恐る振り向くとドンへが動くのが分かった。
「…?」
「ごめん、起こしちゃった」
「ん、いいよ。おかえり」
「ただいま」
「疲れた顔してるね」
「ドンへもね。無理してるんでしょ」
「俺はいいけどはダメだよ。ちゃんと休んで」
「何それ」
ベッドに寝転んだまま、起きているのかいないのか分からない瞳で私を見つめた。ドンへを見ていると、今日あった嫌なことが全てどうでも良くなって、張りつめていた神経が癒されていく。
「お腹減った」
「ご飯作ろうか。何食べたい?」
「が食べたい」
「バカじゃないの」
「こっち来て」
「ドンへまだ寝惚けてるでしょ」
「ちゃんと起きてるよ」
ドンへは相変わらず人のベッドを占領して、柔らかい笑顔で手招きをする。しなければいけないことが山積みなのに、脳裏に浮かんだ雑用は一瞬で消えた。いつものパターン。結局ドンへと一緒にごろごろしてしまう。きっと起きたらまた朝になっているんだ。
「俺ここ住もうかなぁ」
「すぐ寂しくなって出て行くと思うよ」
「何で?」
「ヒョクチェがいないから」
「でもに毎日会える」
そっと額にキスを落として、ドンへはまた瞳を閉じた。人を喜ばせておいて、きっとそこまで深くは考えていないんだ。ドンへは私だけの彼氏じゃないのかな。
「ドンへ」
「んー?」
「私に毎日会いたい?」
「会いたいよ」
「本気で聞いてるんだよ」
返事がないから顔を覗き込むと、もう眠っている。諦めて立ち上がろうとした瞬間、掌をぎゅっと握りしめられた。思った以上に強い力で掴まれて、意外に本気で愛してくれているのかもしれない、とまた嬉しくなる。
「」
「何?」
「俺に決めてよ。安心させて」
「ドンへが不安になることあるんだ」
「俺は最初からだって思ってるもん」
後ろからぎゅっと抱きしめられて、その暖かさに鼓動が共鳴する。また一歩、距離が近づいたような気がした。
2012.03.08