Just like a dream



仕事が終わったらすぐに帰ると約束したクリスマス、次の予定が早まって逢いに行けなかった。一旦帰国するから絶対に逢えると言い切った大晦日、事務所主催のパーティーから抜け出せなくて、また約束を破った。名誉挽回で誘ったお正月の初詣も、滅多にならない二日酔いでキャンセル。新年早々僕は神様に嫌われているみたいだ。渡そうと思っていたプレゼントの箱が、鞄の中で寂しく眠っている。はいつも「気にしないで」と笑って許してくれるけど、僕が逆の立場ならきっとそんなこと言えない。


「…行かなきゃ」


栄養ドリンクと頭痛薬を無理矢理流し込んで、僕は立ち上がった。まだの予定も分からないけど、『いつもの公園で待ってる』とメールを送って、すぐに家を出た。今日は、逢えるまで僕がを待つんだ。昼まで寝ていたせいで、公園に着く頃にはもう日が暮れかけていた。こんな時間に女の子を呼び出すなんて、よく考えたら危ない。気付いて迎えに行こうとしたら、丁度後ろから声をかけられた。


「キュヒョン」
、ごめんいきなり呼び出して」
「また逢えないかと思った」


悲しそうな声に胸が痛んで、僕はそっとを抱きしめた。しばらく会っていなかったからか、何となくぎこちなさを感じる。冬の寒さのせいかもしれない。は冷え性だから。僕はそっと体を離して、ポケットからプレゼントの箱を取り出した。が欲しがっていた、クリスマスデザインのネックレス。当日に渡せなかったことがずっと気がかりだった。


、クリスマス逢えなくてごめん」
「いいよ。それなりに楽しく過ごしたから」
「これ、遅くなったけどプレゼント」
「…ありがとう」


は少し頬を緩めて、大事そうに箱を受け取った。その様子に安心して、僕は「開けてみて」と促す。でもはじっと箱を見つめたまま動かない。やっぱり怒っているんだろうか。それとも嬉しすぎて動けない?しばらく様子を伺っていると、が急に真面目な顔で僕に向き合った。


「キュヒョンごめん、貰えない」
「え?」
「今日、別れようって言いに来た」
「約束破ったの怒ってる?それならもう二度としない」
「分かってる、キュヒョンは悪くないって」
「じゃあ何で…」
「分かってるけどやっぱり責めちゃうんだよ、キュヒョンのこと」
「いいよ。怒ってよ僕のこと」
「そんなの出来るわけない」


はぎゅっと唇を噛んで、滲んできた涙を押し返す。僕も唇を噛んで、溢れそうな涙と、次々に浮かんでくる言葉を一生懸命飲み込んだ。が思いっきり泣いてくれるなら、僕だって思いっきり気持ちを伝えられる。でもがそうしないのは、本当にこれで終わりだからなんだ。いつも重ね合っていた唇の優しい感触が、こんなタイミングで僕の中に蘇ってきた。


「キュヒョン、これ返すね」
「僕が持ってても悲しいだけだから、が捨てて」
「捨てられないよ」
「じゃあ僕の側に居てよ」
「私が逢いたいとき、キュヒョンは側に居てくれるの?」


の言葉に、僕はどうやっても頷けなかった。運命ってほんとに自分で変えられるんだろうか。それなら今すぐの手を取って、ずっと2人だけで生きられる世界に行きたい。全てが夢ならいいのに。


2012.01.05