COSMOPOLITAN(Honey)



、ドラマ出るのやめれば?」
「はぁ?急に何なの」
「キスシーンとか、見てられない」
「演技力の未熟さは自分でも分かってます」
「そうじゃないよ。俺が嫌だから」


逃げるように言い捨てて、ユノは音楽を聞き始めた。ヘッドフォンから大音量のロックが漏れてくる。そんな風に思われていたことが意外で、嬉しさと戸惑いが同時に押し寄せた。いつもユノを追いかけるのが普通になっていたから、こうやって素直に求められるとどうすれば良いか分からなくなる。


「ユノ、何かあった?」


私は無理矢理ヘッドフォンを外すと、ユノが普段するように顔を覗き込んだ。でもやっぱり上手くいかない。ユノは何か言おうとしたけど、途中でやめてしまった。代わりにそっと唇を重ねて、衝動を抑えるようにまた途中で止める。そういえばユノは簡単に私の気持ちを引き出してしまうけど、私にそれが出来たことがあったのかな。


「…なに焦らしてるの」


ポロッと溢れた言葉が本当に素っ気ない。ドラマならあんなに軽く言えることが、ユノを前にすると全く別の言語に変わってしまう。ユノはちらっと私の顔を見て、溜め息をついた。


「ユノごめん、そういうつもりじゃなくて」
「仕事だって分かってる」
「うん…」
「でも最近ダメなんだ」
「え?」
のこと一人占めしたい。他の男に触らせたくない」


ユノは情けなさそうに笑って、私の首元に顔を埋めた。


「俺だけのものになって」


なんだ、ちゃんと私にも出来てるんだ。ぎこちない台詞でしか紡げないけど、伝わっているんだ。ユノの純粋な気持ちが胸の中に広がって、ゆっくりと愛しさに変わっていく。この温度が逃げていかないように、ぎゅっと大きな背中を抱きしめた。


「愛してる」


駆け出す想いを止めなくてもいい。キスだって時間を忘れるくらいして欲しい。一日中ベッドの上で転がっていよう。どんな望みも受け入れてあげる。世界中探しても、あなた以上の人には出会えないって分かってるから。


2013.02.06