COSMOPOLITAN(Darlin')



「あれ、この雑誌買ったの?俺持ってるのに」
「出来るだけ店頭から減らしたくて」
「何その営業妨害」
「ユノは世界に色気振りまき過ぎだよ」


どこかに隠して置けば良かった。嫉妬していること、知られたくなかったのに。今月発売のファッション誌で表紙を飾っていたのは、ユノと人気モデルの大胆なカップルショット。本屋さんで大きく引き延ばされたバナーを見かけてしまい、頭の中から消そうにも消せずに1冊購入してしまった。仕事なのは分かっているけど、このジェラシーはどうにも止まらない。


「ドラマのキスシーンは普通に見てたじゃん」
「静止画で残る方が嫌だ」
「そんなこと言われても」
「嬉しかったでしょ?あの子可愛いもん」
「否定はしない」
「ユノのバカ」
「えー未遂に終わってるのに」
「…何が」
「キス」


机の上に置いてあった雑誌を取り上げて、ユノは無造作にページを捲った。見ているのは料理の特集だけど、表紙がちらちらと私の視界を遮る。ユノとモデルが有名ブランドの服を身にまとって、カップルのように顔を寄せ合っていた。あと1ミリ近づいたら、唇が触れてしまいそうな距離。綺麗だなと思う反面、見れば見るほど越えられない壁を感じて、買ったことを後悔した。


「あーこれ美味しそう。作って」
「やだ」
「なに怒ってんの。俺も男だから少しぐらいドキドキするよ」
「色気なくてごめんね、凡人ですから」
「またそうやって拗ねる」


ユノは雑誌を元あった場所に戻して、私の腰にそっと両手を回した。


「…何」
「雑誌と同じでしょ?あんまり怒んないで」
「でも私はモデルじゃないよ」
「俺にとってはが1番綺麗。誰よりもドキドキする」


焦らすように囁いて、ユノはそのまま耳たぶにキスをした。くすぐったくて思わず身を引くと、どことなく嬉しそうに唇を指でなぞる。


「一緒だね、も」
「え?」
「ドキドキしてるの良く分かる」


じっと見つめられることに我慢出来なくなって、思わず目を逸らしてしまう。ユノはそんな私の顔を覗き込むように、ゆっくりと唇を重ねた。どんな喧嘩をしても、最終的にはいつもユノが折れてくれるんだ。


「…もう余計な嫉妬しなくていいよ。無駄だから」
「うん…」
じゃないとこんなに燃えないし」
「分かったよ」
「逃げようとしてるでしょ」
「そんなことない」
「じっとしてて」


今日は時間もあるし。ユノはそう言って悪戯っぽく笑った。


2012.01.25