Cinderellike



「チャンミン大変、どうしよう」
「何かあったの?」
「…ファスナーが上がらない」
「あと5分以内に出ないと間に合わないけど」
「だから焦ってるんだよ!太ったんだきっと…」
「ちょっと見せて」


2人揃って招待されている結婚式の朝、着るつもりだったドレスに異常発生。半年前はぴったりサイズだったのに、今日に限って途中で詰まってしまった。どう頑張ってもファスナーが動かない。隣を歩くのが女友達なら、他のドレスで間に合わせれば良かった。でもチャンミンみたいな男と並んで歩くのに、適当な格好は出来ない。その思いも相まって、私の焦りは頂点に達していた。半泣きでジタバタする私とは対照的に、チャンミンは至って冷静。


、大丈夫。治った」
「えっほんと?」
「うん、ちょっと噛んでただけ」
「良かった、遅刻するかと思った」
はとにかく焦り過ぎ」
「…すいません」


チャンミンは私にドレスを着せた後、泣いたせいで崩れたメイクまで直してくれた。なんて出来た彼氏なんだろう。まるで私専属のスタイリストだ。


「チャンミンって何なの?いつも冷静で尊敬するんだけど」
「逆には何でいつも慌ただしいの?驚くんだけど」
「チャンミンが隣にいるからだよ」
「俺のせい?」
「うん。似合う女にならなきゃ!って背伸びしちゃう」
「まぁ、みすぼらしい格好されてても嫌だけど」
「ほらそんなこと言うでしょ?だから気が抜けない」


今日だって、すらっとした体型にぴったりのスーツを、何の違和感もなく着こなしている。それはチャンミンだけじゃなく、他のメンバーも同じ。私がどれだけ頑張っても、元々身に付いているオーラには負けてしまう。


「心配しなくてもは綺麗だから」
「そんなことない」
「天の邪鬼は可愛くないよ」
「でも」
「それ以上暗いこと言ったら置いてく」
「え、ちょっと待っ…」


また焦る私の身体を押さえて、チャンミンは深く口付ける。唇が離れたときには、魔法をかけられたシンデレラのような気分になっていた。


の緊張、半分貰ったから」
「…グロスも一緒に持ってっちゃったね」
「ごめん」
「ううん、ありがと」


チャンミンの唇についたグロスを指でなぞって、もう1度自分に魔法をかけた。


2010.10.25