Be true to me...



「ちょっとユチョン」
「ん?」
「何この体勢」
「駄目?」
「良いわけないじゃん。ユノに見られたら」
「倦怠期なんでしょ?」
「ごめん、さっきの忘れて。そして退けて」
「えー無理」


倦怠期かもしれない。俺の顔を見て、挨拶でもするような調子で言った。続きを促してみたけど本当に大したことなくて、寧ろ惚気に近いような内容だったから興醒めする。耳を傾けた俺がバカだった。横取り出来るかもしれないという浅はかな希望が、判断力を奪ったんだ。いつも冷静。それが俺の取り柄なのに、肝心なときに発揮されない。


「最近、少しぐらい会えなくても寂しくないんだよね。病気かな」
「女性ホルモンが足りないんじゃないの。って色気もないし」
「ユノは可愛いって言ってくれるもん」
「前から思ってたんだけど、ユノのセンスって独特だよね」
「何それ、褒めてんの?」
「褒めてるわけないじゃん」
「失礼だと思うんですけど…!」
「ヨガでも始めたら?代謝良くなって良いかもよ」
「体堅いんだよ、私」


何が悲しくて、狙ってる女の恋愛相談を聞かなきゃならないんだ。床に座ってストレッチをするを見ていると、やけに感情的になっている自分に気付く。心のなかで2つの固まりが闘っていた。止まれ。冷静な俺、戻ってこい。ジタバタ足掻いてみても無駄なのは分かっている。だって今日俺が家に留まっていたのは、がユノに会いにくることを知っていたから。脳の隙間からモラルが滑り落ちて、視界の端に映るを捉えた。


「俺なら」
「は?」
「俺ならもっとドキドキさせられると思うけど」
「いや、どう考えても駄目でしょ」
「何で?楽しいならそれでいいじゃん」
「良くないよ。私ユチョンの彼女じゃないし」
「じゃあ彼女になって」
「…ユチョン、本気で言ってんの?」
「うん」


の返事も待たずに、その場で床に押し倒した。は抵抗しなかったけど、それが俺を受け入れるサインだとは到底思えなかった。着ていた服のボタンを外して、鎖骨の辺りを唇でなぞる。は動かない。呼吸も、心臓の鼓動だって全然変わらない。悔しい。ユノと俺にはそんなに距離があるんだろうか。


「ユチョンごめん、諦めて」
「何で?」
「駄目なんだよ、いくらユチョンでも」
「心まで要らないから、体だけでも欲しいよ」


俺はゆっくり起き上がって、を見つめた。その瞳は揺らぐことがなくて、涙さえ溢さない。どうしても俺じゃ駄目なんだ。触れただけですぐに堕ちてくれる女の子達が、今はすごく愛おしいと思う。


「…、そんなにユノが好き?」
「うん」
「変わらない?」
「うん、申し訳ないけど」


いつの間にかに抱きしめられて、俺は泣いていた。情けない。この間、ジュンスも同じ目に遭って涙を流していたのを知っている。今日は2人でやけ酒だ。悔し紛れに背中に滑り込ませた手は、丁寧に躱された。そのうちに玄関の開く音がして、ユノが帰ってきたことが分かる。俺は急いで涙を隠して、の側を無言ですり抜けた。


2011.08.14