And you?



「あれー?」
「どしたの?」
「俺のカーディガン知らない?」
「…知らない」
「最近買ったばっかりなのに…」


言えない。まさか私の部屋にあるなんて。嘘をついたり誤摩化すのが苦手な私は、ユチョンに悟られないよう平静を装った。そんなことも知らずに、ユチョンは他のメンバーに聞き込みをしている。バレないうちに退散しようと、荷物を持ってこっそり立ち上がった瞬間。


ちゃん」
「ぎゃ!ってなんだ、ジュンスか」
「まだ言ってなかったんだね、あのこと…」
「ごめん、タイミングがなくて」
「ううん、僕が悪いんだよ」


ユチョンのカーディガンは某ブランドの限定品で、それを手に入れた日のユチョンはまさに有頂天だった。絶対誰にも貸さないと言い張り、実際に自分で袖を通すまでに2週間はかかった。それくらい大事にしていたカーディガンが何故うちにあるのか。ジュンスが思いっきりコーヒーを零したからだ。大した染みにはならなかったけど、ユチョンがそれを見て笑顔で許してくれるとは思えない。私から言うよ、と預かったものの、なかなかカミングアウト出来ずに放置していたんだった。


「今からユチョンに話すよ、ほんとのこと」
「え、大丈夫?」
「いつまでも隠してられないしね」
ちゃん格好良い…」


2人でこそこそ話していたら、聞き込みが終わったらしいユチョンが現れた。


「はぁ…みんな知らないって」
「ユチョン、ごめん」
「ん?」
「私が持ってる、そのカーディガン」
「マジで?何で?」
「あのですね」
「うん」
「持ってるんですけど、正常な状態ではないというか…」
「どういうこと?」
「ごめんなさいコーヒー零しちゃいました!!」


私は一気にそう言って、廊下の端で震え上がっているジュンスと視線を交わした。ユチョンはしばらく無言でぽかーんとしていたけど、すぐに状況を把握したらしい。ニヤッと悪戯っぽい顔で笑った。


「ふーん。で、どうしてくれんの?」
「染み抜きします」
「別にいい」
「代わりになにか別の服をプレゼント」
「しなくていい」
「じゃあどうして欲しいの?」
「俺に言わせたいの?」


ユチョンは車のキーと私の手を取って、すたすたと歩き出した。


「えっ、ちょっとどこ行くの?」
「カーディガン取りに」
「やだ。何かされそうだから行かない」
「あれ高かったんだよねー」
「だからごめんって言ってるじゃん!」
「共犯なんて酷いよな」


まぁこれでジュンスが助かるなら本望…なんて思えるほど私の心は広くない。今度絶対に何か奢らせてやる。ユチョンに拉致されながら、ジュンスに宣戦布告をした。


「ジュンス、覚悟しとけよ!」
「覚悟するのはの方だと思うけど」
「ユチョンがそんなに冷たい人だと思わなかったなぁ」
「その手には乗らない」


2010.09.27